小児期にいろいろな予防接種を何回も受けていますが、長年経過すると免疫が低下するので、一定期間後に追加接種が必要になります。
接種を受けていない場合などには基礎免疫からやり直しになります。麻疹、風疹などの生ワクチンは1回とされていましたが現在は2回とされています。
下の表1は日本で認可されている、定期、臨時、任意の予防接種です。
表2は当院で提供している輸入ワクチンです。母子手帳に記載されている定期接種は必ず確認してください。
対象疾患 | ワクチン(WHOの抗原表示)(注) | 基礎免疫の時期、回数、接種量 | 追加時期と接種量 |
---|---|---|---|
破傷風(Tetanus) ジフテリア(Diphteria) 百日咳(Pertussis) ポリオ(Poliomyelitis) |
四種混合 (DTaPIPV) 二種混合 (DT) 大人に接種可能な三種混合 (DTaP) |
生後3~12か月 3回 (DTaPIPV) | 18か月-2歳 (DTaPIPV 0.5mL) 11-12歳 (DT 0.1mL) 8歳以上 (DTaP 0.5mL) |
日本脳炎 | 不活化ワクチン (JEˍInactd) | 3歳時に2回 (0.5mL) | 4歳、9歳、爾後は5~10年毎 |
B型肝炎(Hepatitis B) | 組換DNAワクチン (HepB) | 生後2か月~10歳未満 4週2回 (5µg) 10歳以上 4週2回 (10µg) |
初回 初回から6か月後 2回目以降:10年以上の間隔 |
麻疹 (Measles) 風疹(Rubella) |
混合ワクチン (MR) | 1回目:生後12か月、2回目:5~6歳 | |
水痘 (Varicella) | 単味ワクチン (Varicella) | 1回目:生後12か月、2回目:生後18~30か月 | |
結核 | BCG | 生後5か月 | |
ヒトパピローマウイルス感染症 | HPV (2価又は4価) | 13歳以上(女性) 2回 | 初回から6か月後 |
コロナウイルス感染症(Covid-19) | メッセンジャーRNAワクチンなど | 4週間隔2回 (高齢⇢低年齢に拡大中) | 初回から6か月以降(検討中) |
インフルエンザ | 季節性4価HAワクチン (Influenza vaccine) | 生後6か月-3歳未満 2回 (0.25mL) 3歳以上、1~2回:原則1回 (0.5mL) |
毎年 |
肺炎球菌感染症 | 12価ポリサッカライドワクチン (Pneumoˍps) | 65歳以上 | 5年以上(Pneumoˍpsは不摘?) |
A型肝炎 | 不活化ワクチン (HepA) | 2~4週間隔2回とされているが1回で良い | 初回は6か月~1年後 以後は10年以上の間隔 |
髄膜炎菌性髄膜炎 | 4価結合型ワクチン (MenACWY-135 conj) | 2歳以上 (0.5mL) | |
おたふくかぜ | 単味ワクチン (Mumps) | 1歳以上 4週以上の間隔2回 (0.5mL) | |
狂犬病 | 不活化ワクチン:ラビピュール (Rabies) | 0、7、28日の3回 (0.5mL) | 1年後、爾後は5年毎 |
黄熱 | 弱毒生ワクチン (YF) | 1回 (0.5mL) |
対象疾患 | 製品名 (WHOの抗原表示)注 | 基礎免疫の回数 (接種量) | 追加時期と接種量 |
---|---|---|---|
ダニ媒介性脳炎 | FSME-IMMUN (TBE) | 4週間隔2回 (0.5mL) | 1年後、爾後は5~10年毎 |
腸チフス | Typhim Vi (Typhoidˍps) | 1回 (0.5mL) | 3年毎 |
B型肝炎 | Enjerix-B (HepB) | 4週間隔2回 (20µg) | 6か月後、爾後は10年以上の間隔 |
肺炎球菌感染症 | Nimenrix (MenACWY-135 conj) | 1回 (0.5mL):当院では16歳以上 | |
狂犬病 | Verorab (Rabies) | 0、7、28日の3回 (0.5mL) | 1年後、爾後は5年毎 |
渡航先の感染症情報を入手し、感染経路による飛沫・空気感染、経口感染、接触感染、昆虫媒介感染、動物傷害感染などに分け、渡航先の衛生環境、滞在地、業務、滞在期間、下の表3その他の参考資料を検討して選択し、更に、①で検討したUP-TO-DATEが必要な予防接種を加える。
地域 | 検討が必要な予防接種と予防薬の種類 |
---|---|
大洋州 | 破傷風を含む製剤、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、コレラ、新型コロナ、マラリア予防薬など |
アジア | 破傷風を含む製剤、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎、ポリオ、コレラ、新型コロナ、マラリア予防薬など |
中近東 | 破傷風を含む製剤、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎、ポリオ、コレラ、新型コロナ、マラリア予防薬など |
アフリカ | 破傷風を含む製剤、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎、ポリオ、コレラ、黄熱、新型コロナ、マラリア予防薬など |
東欧 | 破傷風を含む製剤、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、髄膜炎、ダニ媒介性脳炎、新型コロナなど |
西欧 | 破傷風を含む製剤、A型肝炎、B型肝炎、髄膜炎、ダニ媒介性脳炎、新型コロナなど |
北米 | 破傷風を含む製剤、A型t肝炎、B型肝炎、狂犬病、髄膜炎、新型コロナなど |
中米 | 破傷風を含む製剤、A型t肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎、」コレラ、新型コロナ、マラリア予防薬など |
南米 | 破傷風を含む製剤、A型t肝炎、B型肝炎、狂犬病、腸チフス、髄膜炎、」コレラ、黄熱、新型コロナ、マラリア予防薬など |
予防接種一定の期間を開けて受けることと定められています。次の予防接種までの期間は、不活化ワクチンは1週間以上、生ワクチンは4週間以上、臨時予防接種の新型コロナは2週以上とされています。
予防接種が多い場合は個別に受けると、出発までに終了しません。表4の予防接種の間隔参考にして複数同時接種計画(表5)を作ります。
4種類程度の同時予防接種を受けても副作用は特に強くなることはないとされています。
当院ではご希望をお聞きし、各表に示した事項を良く説明し、ご納得の上で、表5の様な予防接種計画を作成します。
区分 | 疾患、製剤、抗原 | 基礎免疫 | 初回追加 | 以後の追加 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
初回 | 1週後 | 4週後 | 6月~1年後 | |||
定期接種の UP-TO-DATE | 破傷風を含む製剤:TT、DTaP | ○ | ○ | ○ | 10年毎 | |
日本脳炎、エンセバック:JEˍInactd | ○ | ○ | ○ | 5-10年毎 | ||
麻疹・風疹混合:MR、麻疹:Measles、風疹:Rubella, おたふくかぜ:Mumps、水痘:Varicellaなどは4週以上の間隔が必要 | ||||||
不活化ポリオ、イモバックスポリオ:IPV | ○ | ○ | ○ | 長期間経過後に1回 | ||
経口感染性疾患 | A型肝炎、エイムゲン:HepA | 1回 | ○ | 10年毎 | ||
腸チフス、Typhim Vi:Typhoid | 1回 | 3年後 | 3年毎 | |||
その他の疾患 | B型肝炎、ビームゲン、Enjerix-B:HepB | ○ | ○ | ○ | 10年毎 | |
狂犬病、ラビピュール、Verorab:Rabies | ○ | ○ | ○ | ○ | 5年毎 | |
ダニ媒介脳炎、FSME-IMMUN:TBE | ○ | ○ | ○ | 5-10年毎 | ||
新型コロナ:Covid-19 | ○ | ○ | 6月後? | ? | ||
髄膜炎:MenACWY-135 conj | 1回 | 5年後? | ? | |||
黄熱:(YF) | 1回(検疫所等で接種、生ワクチンなので4週以上の間隔が必要) |
破傷風の追加とMRの2回目、A型肝炎、腸チフス、B型肝炎、狂犬病、黄熱の7種類が必要な赴任例 (新型コロナ2回終了、マラリア予防薬希望)
接種場所:4週後までの接種は当院。黄熱は検疫所など。6月-1年後の接種は赴任先又は一時帰国時。その後は再赴任時。
区分 | 疾患、製剤:抗原 | 接種・投薬日 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
開始日 | 1週後 | 4週後 | 9週以降 | 6月-1年後 | 3年後 | 6年後 | 10年後 | ||
定期接種の UP-TO-DATE |
破傷風を含む製剤、TT、DTaP | ○ | ○ | ||||||
麻疹、風疹:MR | MR | ||||||||
経口感染性疾患 | エイムゲン:HepA | ○ | ○ | ○ | |||||
腸チフス、Typhim Vi:Typhoid | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
その他の疾患 | ビームゲン、Enjerix-B:HepB | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
ラビピュール、Verorab:Rabies | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
黄熱:YF | ○ | ||||||||
マラリア予防薬受取、 | ○ |
日本脳炎の追加、破傷風、A型肝炎、腸チフス、B型肝炎、狂犬病の6種類が必要赴任例 (新型コロナ2回修了)
接種場所:4週後までの接種は当院。6月-1年後の接種は赴任先又は一時帰国時。その後は再赴任時。
区分 | 疾患、製剤:抗原 | 接種日 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
開始日 | 1週後 | 4週後 | 5週後 | 6月-1年後 | 3年後 | 6年後 | 10年後 | ||
定期接種の UP-TO-DATE |
破傷風を含む製剤、TT、DTaP | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
日本脳炎:JEˍInactid | ○ | ○ | |||||||
経口感染性疾患 | エイムゲン:HepA | ○ | ○ | ○ | |||||
腸チフス、Typhim Vi:Typhoid | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
その他の疾患 | ビームゲン、Enjerix-B:HepB | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
ラビピュール、Verorab:Rabies | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
破傷風と日本脳炎の追加、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、新型コロナの6種類が必要な出張例
接種場所:4週後までの接種は当院。6月と10後の接種は職域接種。6月~1年後は出張先又は一時帰国時。その後は再出張時。
区分 | 疾患、製剤:抗原 | 接種日 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
開始日 | 1週後 | 4週後 | 6週後 | 10週後 | 6月-1年後 | 5年後 | 10年後 | ||
定期接種のUP-TO-DATE | 破傷風を含む製剤、TT、DTaP | ○ | ○ | ||||||
日本脳炎:JEˍInactid | ○ | ○ | |||||||
経口感染性疾患 | エイムゲン:HepA | ○ | ○ | ○ | |||||
その他の疾患 | ビームゲン、Enjerix-B:HepB | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
ラビピュール、Verorab:Rabies | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
新型コロナ:Covid-19 | ○ | ○ | ? | ? | ? |
接種直後の異常反応はアナフィラキシーの危険信号(頻度:0.1%未満)
接種数分後から30分後の間の、どうき、かゆみ、耳鳴り、じんましん、咳、くしゃみ、腹痛、吐き気などの異常症状はアナフィラキ
シーに発展する危険信号であり、エピネフリン注射とかステロイド治療が必要になる。
出現しなければ問題はない。
接種の数時間後から2~3日の間の副反応(頻度:0.1~数%)
主な症状は、頭痛、発熱、発疹、腹痛、倦怠感、注射部位の、発赤、腫れ、かゆみ、痛みなど
このような症状は放置しても2‐3日で消滅
注射部位の「しこり」とか出血斑は1‐2週間で消滅
インフルエンザワクチンの添付文書に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギランバレー症候群などの重大な中枢神経副反応の記載があり。頻度は0.1%未満又は不明とされている。
旧マウス脳由来の日本脳炎ワクチンでは100-300万回に1回程度発生し、動物臓器由来成分との関連が疑われ、製造が中止された。現在の細胞培養日本脳炎ワクチンは安全と考えられている。
万一、激しい頭痛、高熱、けいれん、意識混濁、しびれ、麻痺などが現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
はげしい運動や深酒は禁止。入浴は差し支えない。翌日から普段通りの生活。
042-628-4935(森次医院)。電話が繋がらない場合は最寄りの医療機関に受診してください。