森次医院では海外赴任、出張、留学、ボランティア活動、観光など、海外 旅行のための予防接種や健康相談などを専門に行っています。

感染症情報

動物から感染する病気

1.ウイルス感染症
狂犬病(Rabies)

病原体:狂犬病ウイルス
ワクチン:狂犬病ワクチン
治療薬:なし
感染源と多発地域:狂犬病ウイルスは発病した動物の唾液に含まれていて、咬まれた場合、傷をなめられた場合などに感染の危険が発生します。イヌが主な動物ですがネコ、キツネ、コウモリ、リス、アライグマ、スカンク、その他の咬み付く動物は全て危険です。狂犬病は大洋州の島々以外の全世界に広がった病気です。飼い犬の予防接種と動物検疫により、英国、日本などの島国とか、野生動物宿主が少ないオーストラリア、ニュージーランド、スエーデン、ノルウエーなどでは撲滅に成功しました。その他の地域、特に大陸国家では、野生動物から感染する場合があり、根絶が難しい様です。中南米とアジア諸国、ブラジル、ボリビア、コロンビア、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、メキシコ、ペルー、インド、ネパール、フィリッピン、スリランカ、タイ、ベトナム、中国などではイヌの狂犬病が多発し、感染する危険があります。
感染経路:病原ウイルスは咬まれた場所の筋肉細胞で増えて神経の端末から入り、神経を通って脳に到達します。神経の端末に入ったウイルスは抗体で中和されません。
主な症状:潜伏期は、平均、1〜2か月ですが、1年以上の場合もあります。通常、咬まれた位置により異なり、足先が咬まれた場合には腕を咬まれた時より長くなります。咬まれた場所から脳までの距離が長い分だけ、時間が掛かるためです。潜伏期が終わると発熱、頭痛、筋肉痛、疲れ、空咳などの風邪の様な症状が始まり、咬まれた場所の痛みとか知覚異常、筋肉の痙攣や硬縮などが起きます。脳の症状は興奮、不安狂騒などから始まり、錯乱、幻覚、攻撃性、狂水発作などに進み、筋痙攣を起し、昏睡状態になって死亡します。発病すると助かりません。
治療:狂犬病が根絶されていない地域で野生動物に咬まれたり引掻かれたりした場合とか、ヒトの狂犬病発生地で飼いイヌとか飼いネコなどに咬まれた場合には傷口を石鹸と水で良く洗い、大急ぎで病院に行き傷の手当を受け、同時に、狂犬病ワクチンと狂犬病に対する抗体製剤(抗狂犬病免疫グロブリン)の注射を受けます。狂犬病ワクチンは最初に注射した日を0日として、3、7、14、30日の5回、受けます。これ等の処置と傷の手当て以外に治療法はありません。症状が出ないことを祈りながら、潜伏期(最長3年間)が過ぎるのを待つことになります。
予防:狂犬病が根絶やしされていない国で、野生動物に近づき、手を差し出すのは危険です。日本のワクチンはウイルスを細胞培養で増やして製造された、安全性の高いワクチンです。外国に長く滞在する人は、出発前にワクチンを注射しておけば安心です。咬まれた場合には、上記の様に、大急ぎで処置を受けなければなりませんが、医療機関にワクチンや抗狂犬病免疫グロブリンがないかも知れません。街から遠く離れた場所で咬まれた場合には病院に到着するまでに時間がかかります。別の病院を捜さなければならない場合もあるでしょう。ワクチン接種を始めて受けた場合には、抗体が出来るまでに10日以上かかりますが、追加接種を受けた場合には直ぐ上昇します。
コウモリ狂犬病
最近、欧米やオーストラリアなどでコウモリに咬まれて狂犬病の様な症状を起こして死亡した患者が発生し、狂犬病ウイルスに似たウイルスが見つけられています。コウモリは本物の狂犬病にも感染していて、咬まれたヒトや動物が狂犬病を発病します。コウモリは狂犬病の他にSARSやエボラ出血熱などの自然宿主でもある危険な動物です。

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ラッサ熱

野ネズミの一種であるマストミスが自然宿主です。発生地域はウイルスに感染しているマストミスが生息しているナイジェリア、ベニン、トーゴ、ガーナ、コートジボアール、リベリア、シエラレオーネ、ギニアなどと、中央アフリカ共和国に限られています。ウイルスは感染マストミスの尿や唾液中に排泄され、手足の傷などからヒトに感染すると考えられ、年間20〜30万人の感染者が発生していると推定されています。病院で発生していた患者の血液、尿、体液などからの接触感染は、ゴム手袋の着用、注射器、排泄物の安全処理などにより無くなりました。主症状は高熱で、多臓器不全を起こします。致死率は70〜80%ですが、早期にリバビリンなどの抗ウイルス剤を注射すれば、数%まで低下すると言われています。ワクチンはありません。素足にサンダル履きで出歩くのは危険です。裸足はもっと危険です。


エボラ出血熱

自然宿主はコウモリとされています。チンパンジーから感染し、流行した例がありますが、動物界からヒトへの感染経路は明らかでありません。患者の血液とか体液などから感染します。接触感染はありますが空気感染は無いようです。飛沫感染は疑われています。主な症状は発熱、頭痛、腹痛、筋肉痛、胸部痛、下痢、口腔、消化管などからの出血が特徴的です。致死率は50%以上です。これまで、スーダン、ウガンダ、ガボン、ザイール、コンゴなどで発生しました。ワクチンはありません。


マールブルグ出血熱

エボラ出血熱ウイルスと同属のウイルスによる感染症です。自然宿主は不明です。1967年に発生した、ポリオワクチンの製造のためにウガンダから輸入されたアフリカミドリザルからの感染が初発です。このときにはマールブルグ、フランクフルト、ベオグラードなどで同時多発的に37名が発病しました。出血熱が主症状で、患者はサルの取り扱い担当者、腎臓細胞培養担当者、患者の家族、医療スタッフなどでした。この病気は稀な病気です。1967年以降、1975年、1980年、1987年のジンバブエ、ケニアなどの散発的発生、1998年のコンゴ民主共和国の金鉱山での集団発生などがありました。ヒトへの感染経路は不明です。患者の血液、体液などからの感染が疑われていますが確定していません。致死率は25%とされています。ワクチンはありません。治療は対症療法です。

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高病原性トリインフルエンザ

病原体:トリインフルエンザウイルス、Avian Influenza Virus A(H5N1)
ワクチン:緊急用として製造されている。
治療薬:アマンタジン(シンメトレル)、オセルタミビル(タミフル)など。
感染源:感染した鳥、糞など。
トリインフルエンザは、本来、鳥類の病気です。野鳥からニワトリ、アヒルなどの家禽が感染します。最近、高病原性A(H5N1)型ウイルスによる家禽の大量死が世界各地で発生しています。トリインフルエンザが直接ヒト感染することは無いと考えられていました。しかし、1997年に香港で世界最初のA(H5N1)型ウイルスによるヒトの感染が発生し(感染者18名、死亡6名)、その後、2002年の2度目の発生(2名死亡)、2003年のベトナムでの発生(22名感染、15名死亡)、2004年のタイでの発生(12名感染、8名死亡)などにより、ヒトの感染が明らかになりました。2005年以降は、インドネシア、中国、タイ、エジプト、トルコなどに拡大しています。トリインフルエンザウイルスは感染したトリの腸管内で増殖し、糞と一緒に排泄されます。鳥類の感染は経口感染ですが、トリからヒトへの感染経路とか感染機構は不明です。しかし、大量のウイルスに接触した結果であることは明らかです。ヒトからヒトへの感染を疑わせる症例がありますが、現在のところ、トリからヒトへの感染は稀です。ヒトからヒトへ容易に感染するようになれば、トリインフルエンザウイルスではなくヒトのインフルエンザウイルスが誕生したことになります。ヒトの新型ウイルスの発生に備えてワクチンが試験的に製造され、備蓄が始まっています。治療薬としては、ヒトインフルエンザA型とB型に有効なオセルタミビルが新型インフルエンザにも有効であろうと考えられ、備蓄が始められています。トリインフルエンザの感染予防は疑わしいニワトリなどに接触しないことです。発生が報じられている地域では、帰宅時に手を洗いましょう。埃が多い時期にはマスクなども有効でしょう。加熱調理された鶏肉や鶏卵は安全です。

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ハンタウイルス感染症

野生のネズミが感染していて、乾燥地では、ネズミの糞、尿、唾液などに排泄されたウイルスが埃になって舞い上がり、吸い込んだヒトが感染します。ネズミの尿などに汚染された飲食物からも感染します。ヒトからヒトへの感染はありません。韓国、中国、極東シベリアなどの病気は高熱、蛋白尿などの腎障害、皮下出血などが特徴的で腎症候性出血熱と呼ばれています。南北米大陸の病気は、高熱と間質肺炎が主症状でハンタウイルス肺症候群と呼ばれています。死亡率は腎症候性出血熱が1〜10%、ハンタウイルス肺症候群は約40%とされています。年間発生数は、中国が最大で10万人、ヨーロッパから極東シベリアが合計数千人、韓国が数百人程度です。南北アメリカの発生は数十人程度の様です。ワクチンはありません。治療は対症療法です。


重症急性呼吸器症候群(SARS)

2003年に中国で発生した新興感染症です。原因ウイルスはコロナウイルス属の新種ウイルスです。コウモリが自然宿主です。重症の肺炎を起す病気ですが、初期の症状はインフルエンザに似ています。致死率は、60歳未満が13%、60歳以上が43%とされています。流行初期に病院などで多発しましたが、感染予防対策が強化されて止まりました。ワクチンはありません。予防は、今のところ、手洗いの励行、マスクの着用、ウガイなどです。

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2.細菌感染症
ブルセラ症

ブルセラ属の菌は野生の反芻獣、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタその他の家畜などに広く分布しています。ヒトへの感染は感染動物から作られた乳製品の摂取、死体とか組織との接触などにより発生します。ブルセラ症は、酪農従事者、獣医師、屠畜場従業者などに多く、一般の旅行者が感染することは極めて稀です。主な症状は発熱、全身の痛み、衰弱、うつ状態などです。治療にはテトラサイクリン、リファンピシン、キノロンなどの併用療法が行われます。予防ワクチンはありません。


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